はじめに
心理的安全性、という言葉はかなり浸透してきた概念ではあるものの、心理的安全性を確実に確保することは難しいということも認識さている方が多いのではないでしょうか。本記事ではそもそもの用語の説明よりも職場での実態を中心に考えていきます。
心理的安全性
ChatGPTに聞いてみます。
“心理的安全性は、個々のチームメンバーがリスクをとることに対する否定的な結果を恐れることなく、自分の意見やアイデアを表現できる状況を指します。これは、グループ内の信頼と互いの尊重に根ざしており、オープンな対話と創造的な思考を促進します。心理的安全性が確保されている場では、失敗は学習の一部と見なされ、問題提起や提案は歓迎されます。
心理的安全性は、効果的なチームビルディングと成功した組織の両方にとって非常に重要な要素です。Googleの「Aristotleプロジェクト」という研究では、心理的安全性が高パフォーマンスチームの最も重要な要素であることが示されました。これは、チームメンバーが互いに信頼し、尊重し、リスクを取ることを恐れず、意見を自由に表現することができる環境が、創造性、革新性、生産性を向上させるからです。”
本記事では「気兼ねなく何でも発言できる雰囲気が確保された状態」であるととらえて考えてみます。
権威勾配
権威勾配も定義をchatGPTに聞いてみます。
“権威勾配(Authority Gradient)とは、組織やグループ内における権威やパワーの差を表す概念です。この勾配は、一般的に、上位の立場にある人々が下位の立場にある人々に対してどれだけ影響力を持っているか、またはその逆がどの程度可能かを示します。”
この定義ではパワー、と表現されていますが、別の例として医者と看護師がそれぞれ患者の状態を説明した時に医者の意見を信用してしまいがち、というような「専門性による発言の重み」も権威勾配を作る要素として存在しています。
権威勾配は組織において、高すぎる場合はパワーの強いメンバーの意見に議論が流されてしまい効率が落ちる、逆に低すぎる場合は判断や決定を行う際に時間を要してしまう、というようなデメリットがあるといわれています。心理的安全性の面から言うと、権威勾配が適度に保たれている、または多少低めでも安全性は確保されていることになります。
意識せず心理的安全性が保たれていない状態
過去、一緒にお仕事をさせていただいた方のチームで、心理的安全性について会話していたところ、こんな会話がありました。
うちのチームは心理的安全性、保たれてるよね。みんな何でも話すし
そうですね。聞かれたことについても話せていると思います。
この時は確かに問題なさそうに見えており、AさんはBさんに意見を求めることもあるように聞こえました。
後日、プロジェクトを進めているなかでBさんに個別に意見を聞く場面がありました。
この件ですか。Aさんに聞いてみます。
Aさんがどう思っているかわからないですね・・・
リーダーであるAさんは部下のBさんより経験豊富なベテランで、技術や知識についてもある程度差があります。このBさんとの会話から、BさんはAさんの意見が正しいという強い意識があることに気づきました。詳しく掘り下げて聞いていくと、Bさん独自の見解も引き出すことはできるのですが、Bさんには「Aさんが正しい」というあきらめのようなものを感じてしまいました。同様にAさんと会話をしていても「最終的には自分が判断を行う」という意識が強くあることがわかりました。本人達の中に強い権威勾配があったのです。
見えにくい権威勾配への対応
この例の状況では、ある程度部下の意見が議論に上がることはあっても最初から立ち位置の違う意見となってしまいます。対応策として、チーム内での役割分担を行うことにしました。Aさんの意図は汲みつつ、Bさんには部分的に責任者として詳細の検討から決定までを行ってもらうようにしました。最終的に経験豊富なAさんの意見で覆される可能性はありますが、Bさんの考えを全て吐き出してもらっています。これを繰り返すことで、BさんがAさんに全てを委ねてしまわないように進めることができました。
まとめ
心理的安全性を確保するために、権威勾配に対してどう対応するかの一例を挙げてみました。組織上の上下関係、年齢の差など、意見を言い出しにくい、という雰囲気を作らないだけでなく、意見を出しても仕方ない、というような諦めの空気を無くすようにすることが議論において重要であるといえます。本記事が参考になれば幸いです。